釧路地検管内の気候について

最終更新日:2016年1月6日

 元釧路地方検察庁検事正 水野谷幸夫

 釧路地検管内の面積は,四国の約1.5倍であるうえ,本庁・帯広支部・根室支部は太平洋側に,北見支部と網走支部はオホーツク海側に,それぞれ位置しているため,気候は地域によってかなり異なっている。釧路というと「霧」のイメージを抱くが(最近では「世界三大夕日のまち」の1つであるといわれているようである),実際,釧路市は,雨や雪の降る日よりも霧のかかる日のほうが多い。霧は初夏にかかるが,釧路市では,6月~8月の3か月間で霧のかかる日は平均して51.5日(時間にして平均400時間),根室では60.1日,帯広では23.2日である。霧が初夏に多く発生する理由は,既に夏になった空気とまだ夏になりきれない海との季節にずれがあるからである。海は暖まるのに時間がかかるため,初夏の時期は海水温はまだ低い状態(海水温が最も高くなるのは9月ころ)で,暖かい黒潮の上を吹いてきた南風が,道東の冷たい親潮の上に吹き抜けた際,親潮によって冷やされて空気内の水蒸気が凝結して海霧が発生するのである。目安として海霧が届く範囲は30キロくらいである。釧路では1984年(昭和59年)の6月~8月の3か月間で霧のかかった時間が平年よりもかなり多く675.8時間に及び,この夏は,釧路市の最高気温は31℃を記録した。霧の多い年は,猛署のようである。釧路に霧をかけるのは,夏の太平洋高気圧であり,その勢力が強いと,蒸し暑い南風が濃い霧をかけるが,厳しい暑さも連れてくる。これに対し,帯広は,太平洋から約50キロ離れているため霧がかかりにくいこともあって,夏は暑く,平年でも真夏日の日数は10日前後である(帯広が記録した最高気温は,1924年7月12日の37.8℃)。一方,冬は毎年のように氷点下20℃を下回る日があり,最低気温が氷点下38.2℃(1902年1月26日)を記録したことがある。帯広の冬は,日高山脈が雪雲の壁になり,「十勝晴れ」をもたらす。帯広の年間日照時間は,北海道で一番多く,平均約2016時間である(釧路の年間日照時間は平均約1986時間)。根室は,「朝日に一番近いまち」といわれるが,夏は当てはまらないようである。太陽は,夏は北東方向(冬は南東方向)から昇るので,根室より知床のほうが日の出が早くなる。夏至の日の出時刻は斜里町で午前3時33分,根室の3時37分より早い。北見は日本で一番の少雨地である。北見市留辺蘂で観測している雨の量は,年間674.5ミリで,全国約1300か所に設置されているアメダスの中で,一番少雨である。北見は,盆地であり,オホーツク海から直線距離で50キロ以上離れているので,海風が運ぶ雨雲も届きにくいからといわれている(綱走の年間降水量は800ミリを超えている)。網走は,北東方向にオホーツク海,南や西には大雪山系や北見山地などの高い山々があり,風が,海から吹いてくるか,山から吹いてくるかによって天気が大きく変わる地である。山から吹く風は南風や西風で,大雪山系から吹き降りる風は,時に「フェーン現象」を発生させる。
 このように気候が大きく異なる釧路地検管内であるが,平成23年2月初旬までに行われた合計4件の裁判員裁判において,選任された裁判員34人(補充裁判員を含む)のうち,審理期間中釧路に宿泊した裁判員は20人にのぼる。効率的な立証を行い,裁判員の負担をできるだけ減らすよう努めたい。

 本寄稿文は,研修(第756号 2011年6月号)【とびらの言葉】に掲載されたものを誌友会事務局研修編集部の許可を得て転載しております。

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