守りたい社会のために
令和4年に任官
名古屋地検で勤務した後、現在は、札幌地検刑事部勤務
令和4年に任官
名古屋地検で勤務した後、現在は、札幌地検刑事部勤務
世の中には理不尽なことがたくさんあります。
犯罪は、その最たるものです。犯罪によって、取り返しのつかない大怪我や、一生消えない心の傷を負う人がいます。ときには、一瞬で命を奪われる人もいます。
私は、人々が犯罪に怯えることなく、安心して暮らせる社会を守りたいと思い、検事を志しました。
私は、現在、刑事部に所属しています。
刑事部は捜査を担当している部署です。
日中は、被疑者や参考人の取調べを行ったり、事件現場に行って現場の様子を実際に確認したりすることもあります。また、今後の捜査の方針や補充捜査事項について警察と打合せをし、事件の処分方針等について上司に報告・相談等もします。
日中の仕事が一段落した夕方からは、事件記録の精査、防犯カメラ映像やスマートフォンの解析データの分析等を行います。
ときには、具体的な捜査方法や事件の処分について悩み、判断に迷うこともあります。
そのようなときは、まずは、文献や判例を調べて自分で考えますが、一人では解決できないときもあり、そのような場合は、先輩や上司に相談するようにしています。先輩や上司は私が相談に行くと、豊富な知識や経験に基づいて、アドバイスをしてくれます。
悩みながらも、一つ一つの事件に真剣に向き合うことで、検事としての能力が日々向上しているのを感じることができています。
以前、ひったくりの事件の捜査を担当したことがありました。
被疑者は、20代前半の男性で、共犯者とバイクで2人乗りをして、歩いていた被害者に後ろから近付き、持っていたバッグをひったくったという窃盗事件でした。
ひったくりは、被害者に大怪我をさせかねない非常に危険な犯罪です。しかし、被疑者は、当初の取調べでは、ひったくりをしたことを頑なに認めませんでした。
私は、被疑者がなぜ否認しているのか、なぜこのような危険な犯罪を行ってしまったのかなど、真相を解明した上で、被疑者が罪を償い、更生してもらいたいと思い、時間をかけて被疑者と話をしようと考えました。
取調べでは、事件のことだけでなく、被疑者の生い立ちや友人関係などを聞き、まずは被疑者の人柄を知ることから始めました。
そうしていくうちに、非常に苦労をしてきた被疑者の生い立ちや、実は友達思いであるという被疑者の人柄が分かってきました。ときには、お互いに熱くなってしまい、ちょっとした言い合いになることもありましたが、被疑者のことをもっと知るために何度も取調べを行いました。
そして、何度目かの取調べで、被疑者は、突然、ひったくりをしたことを認め、犯行状況や犯行動機等について供述し始めました。
被疑者は、罪を認めた理由について、「正直に話をして、検事さんに二度と犯罪をしないと誓おうと思った。」と言っていました。私は、罪を償って立ち直ってもらいたいという気持ちが被疑者に伝わり、本当のことを話してくれたのではないかと思っています。
私は、この経験を通じて、検事は、被疑者が自分の過ちに向き合って更生する後押しをすることもできると気付かされたので、今後も、このときの気持ちを忘れず、被疑者と真剣に向き合いたいと考えています。
検事の主な仕事には、捜査業務と公判業務があり、いずれも重要な仕事ですが、私は、特に公判にやりがいを感じており、公判が得意な検事になりたいと思っています。
公判検事の仕事は、裁判で事案の真相を明らかにして適正な判決を得ることです。
公判部検事のインタビューにも記載がありますが、裁判はやり直しができないため、適切な主張・立証を行うための準備がとても重要です。
そのため、捜査段階で得られた証拠を丹念に精査するだけでなく、公判段階に移っても必要に応じて補充捜査をします。文献や判例を調べたり、上司や先輩からアドバイスをもらったりしながら、最適な主張・立証の方法を考え、証人尋問や被告人質問の仕方を工夫するなど、入念な準備をした上で、裁判に臨みます。
このように公判検事の仕事は、責任重大でプレッシャーを感じることもありますが、だからこそ、裁判で適切な判決を得られたときには、大きな達成感を感じることができ、仕事のやりがいになっています。
検察庁は、刑事事件ばかり扱っていて殺伐としたイメージがあるかもしれませんが、実際はそうではありません。
一緒に仕事をしている立会事務官と、ときには談笑しながら、和やかな雰囲気で仕事をしています。
また、先輩検事とは仕事後に飲みに行くこともあり、仕事の悩みを相談し、アドバイスをもらうこともあります。上司も、私が仕事で失敗して落ち込んでいるときには声を掛けてくれるなど、常に気に掛けてくれているので、心強い気持ちで日々職務に励むことができています。
検事の仕事は、責任が重く、困難が伴います。
しかし、検事だからこそ成し遂げられることや、感じられるやりがいがたくさんあることを日々実感しています。
検事は、自ら捜査をして事案の真相を解明できますし、何より、一つ一つの事件に真剣に向き合うことで、犯罪から人々の幸せを守ることができる仕事だと考えています。
皆さんにも、検事の仕事に魅力を感じていただけたら幸いです。