若手女性検事の写真

熱い心を持って1つ1つ

平成28年に任官後、大阪、福岡、横浜、東京、神戸の各地方検察庁で勤務し、現在は大阪地検刑事部勤務
フランス共和国で在外研究経験もあり


知恵を絞った結果が真相解明につながる

 私が検事の仕事に興味を持った最初のきっかけは、小学生の頃、女性検事が主人公のドラマを見て、漠然と「かっこいいな」と思ったことでした。
 その後、司法試験に合格し、司法修習中に現実の検事の仕事に触れる中で、実際の事件では、ドラマのように簡単に事件の真相が分かるのではなく、知恵を絞って様々な捜査をして、ようやく真相解明につながることにやりがいを感じ、任官に至りました。
 刑事事件の多くは、警察がまず捜査を行った上で事件を検察庁に送ってくるのですが、その時点で事案の全容が解明されていることはあまりありません。
 そこで、捜査担当の検事は、まず、警察が収集した証拠を基に、この事件は一体どんな事件なのか、その全容はどんなものなのか、様々な可能性を考えます。その上で、検事は、真相解明のためにはどのような捜査をすべきかということを法律家の視点で考え、適正な捜査により必要な証拠を収集して、事件の全容・真相を解明し、その真相に見合った適切な処分をします。

責任があるからこそ自分が納得できるまで

 検事は、任官1年目から、主任検事として多様な事件を担当します。
 主任検察官は、事案の真相を解明し、適切な処分をするために必要な捜査を行い、先輩検事に相談したり、上司の指導を受けたりしつつも、最終的に自分の責任で、起訴・不起訴の処分を行わなければならず、その責任は重大です。
 担当した事件について、証拠を読み込み、被疑者その他関係者を自ら取り調べるのはもちろんですが、事件現場の見分、科学的な実験、専門家の意見聴取等のために外に出て捜査を行うこともあります。
 例えば、放火事件を担当した際には、焼け跡に行って現場の燃焼状況や周囲の状況を詳細に確認するのはもちろんのこと、被疑者の供述どおりに火が燃え広がって現場のような状況になり得るのかを確認するために、警察が行う燃焼実験に立ち会ったこともあれば、覚醒剤を製造しようとしていたという覚醒剤取締法違反の事件を担当した際には、被疑者方から押収した道具で本当に覚醒剤が製造できるのかを確かめるため、警察本部の科学捜査研究所で行う覚醒剤の製造実験に立ち会ったこともありました。
 検事は、このように自分が納得できるまで捜査を遂げた上で、被疑者の処分を決定します。
 特に、起訴するときには、本当に被疑者が犯人で間違いないのか、間違いないとしても裁判で確実に有罪判決を獲得できるのかという観点から、ときには自分が弁護人になったつもりで、あらゆる視点から検討します。決裁を受ける場でも、上司から、鋭い指摘や指導を受け、補充捜査をすることもあります。
 丁寧な捜査と慎重な検討を重ねた結果、有罪を立証するために十分な証拠があり、処罰を求めることが相当であると判断できた場合に初めて被疑者を起訴しますし、逆に、そうではない場合には不起訴にします。
 努力が実を結び、真相を解明できた結果、起訴・不起訴のいずれであれ、適切な処分ができたときには、大きな達成感を感じることができます。

全ての事件に真摯に向き合う

 事件の中には、性犯罪や児童虐待の事件など、被害者が身体だけでなく、心にも深い傷を負う事件もあります。
 そのような事件では、被疑者を起訴して処罰を受けさせれば、被害者が負った心の傷が無かったことになるわけではありません。
 しかし、被害者の心に寄り添い、被疑者に対する適切な処分をすることができた場合には、被害者から「被害に遭ったことは辛かったけれど、気持ちに一区切りがついた。」などと言ってもらえることもあり、そのようなときには、検事としての使命を果たせたと思えます。
 また、検事の仕事は、被疑者を起訴して処罰を求めることだけではありません。
 被疑者が二度と罪を犯さなくて済むには何が必要かを考え、例えば、定職に就けず、お金がないことが原因で万引きをしてしまったような被疑者については、福祉に繋いで立ち直りを支援することも、検事の職責の一つです。
 私は、「被疑者にも、私たち検事と同様、これまで歩んできた人生があり、相手を一人の人間として尊重した上で、話を聞くことが大事である。」ということを常に意識して仕事をしています。被疑者の言い分をよく聴き、追及すべきときにはきちんと追及し、被疑者が犯行に及んだと認められる場合であっても、動機や経緯も考慮した上で、良識にかなった処分を選択することが大切だと考えています。
 熱い心をもって、一つ一つの事件、一人一人の被害者、そして一人一人の被疑者に真摯に向き合い、真相を解明して適切な処分を行うことで社会に貢献するのが、検事の使命であり、醍醐味です。

忙しくてもリフレッシュする時間を大事にする

 私は、現在任官8年目で刑事部に所属しています。
 刑事部での1日の勤務例ですが、出勤後、警察から送致されてきた身柄事件の配点を受けると、すぐに事件記録を検討した上で弁解録取手続(逮捕された被疑者の弁解を聴くという手続のことです。)を行い、勾留の理由、必要性があると判断すれば、裁判官に勾留請求の手続を行います。
 その後は、担当事件の目撃者や被疑者の取調べ、警察への補充捜査の指示、捜査方針の検討、捜査資料の作成、決裁官への報告等をします。先ほど言ったように、ときには事件現場に行ったり、警察の実験に立ち会ったりもします。事件関係者の都合で夜に取調べをすることもあり、残業することもあります。
 特に、新任検事の頃は、「このような事件であれば、このような捜査をすべき」というイメージができておらず、それ程複雑でない事件であっても、捜査方針や処分方針の検討にかなりの時間がかかり、残業をすることも多かったです。
 しかし、経験を積んだことで、判断能力や事務処理能力が格段に上がり、新任検事の頃よりも効率的に仕事を進められるようになりました。時期によっては、忙しいこともありますが、早く帰ることができる日には、職場の仲間や友人と楽しくお酒を飲んでリフレッシュしたりしています。
 また、休日は、自宅でドラマや映画を観てのんびり過ごすこともあれば、勤務地周辺の観光スポットに足を運ぶこともあります。これまで自分が行ったことのなかった地域の地元グルメや名所、伝統行事を楽しめるというのも、転勤があることで得られる貴重な経験だと思います。