JPEC担当検事の写真

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平成19年に任官後、東京、千葉、大阪、京都、山口、沖縄などで勤務
その他、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)サイバーセキュリティ研究所に派遣
現在は、最高検JPEC担当として勤務しつつ、法科大学院に教員(非常勤)として派遣


検事を志した理由

 私は、中学生の頃、読書を通じて検事の仕事を知り、その職域の幅広さや、被害者の保護はもちろん更生や再犯防止など様々な観点を考えていることなどから志望するようになり、最終的には、司法修習において検察の職場を見た上で任官を決めました。

JPEC(先端犯罪検察ユニット)の概要

 JPECとは、情報通信技術(「ICT」や「IT」とも呼ばれます。)が手段として用いられた犯罪等の「先端犯罪」について、その解明に有益な情報の収集、管理、提供のほか、その捜査・公判の支援を行う検察庁の組織です。
 近年の情報通信技術の進展は著しく、これを悪用して企業のサーバーコンピューターに侵入して機密情報を盗み出すといった、いわゆるハッキングと呼ばれる犯罪行為等が増えているのはもちろん、以前から発生していた強盗、詐欺などといった犯罪も、共犯者同士がスマートフォン等の機器を使って情報を瞬時に共有したり、奪い取った現金を暗号資産(いわゆる仮想通貨)に換えて追跡を困難にしたりするなど、情報通信技術を駆使しながら実行されるようになってきています。
 そして、これらの犯罪においては、犯罪者らにおいても、証拠になるようなデータを消したり、共犯者との連絡に匿名性の高いメッセージアプリを使ったりするなど、自分の身を隠すような工作を行っていることが少なくなく、従来の手法だけでは捜査は困難になってきています。
 こうした犯罪に立ち向かうために設けられたのがJPECです。

 JPECは、犯罪者らよりも更に先へ進んだ技術水準において、「デジタルフォレンジック」という、各種のコンピューターやスマートフォン等の電子機器に含まれる情報を回収して分析し、証拠にする手法などを活用しながら、彼らが施した数々の隠滅工作を打ち破って犯行を明らかにすることができる知見や、彼らが犯罪によって得た暗号資産等を追跡して回収することができる知見を有しており、かつ日々最新の情報を収集してこれらの知見をアップデートしています。
 そして、こうした知見を活用して、全国の検事等から寄せられた質問や相談に答えたり、捜査・公判の支援を行ったり、あるいは研修を実施して最新の知識を全国の検事等に広めたりするなどしています。

情報通信分野の知識習得

 私は、任官まで文系科目、とりわけ法律を中心に勉強してきましたが、大学時代にサークルのWebサイト運営を担当した際に、サイト制作が高じて、Perl等のプログラミング言語を使って、Web上で動くプログラムをある程度作れるようにはなっていたなど、情報通信分野に対する親しみはありました。
 その後、検事に任官して様々な犯罪捜査経験を積んだ後、情報通信技術を専門とする我が国唯一の研究機関であるNICTに派遣されました。
 そこでは、例えば世界中から日本に対して行われているサイバー攻撃等の状況をリアルタイムで観測したり、予め用意した囮ネットワークにあえてハッカーを誘い込んでサイバー攻撃を行わせてその様子を観測したりといったことを通じて、サイバー犯罪組織の行動の在り方を分析してきたほか、仮想環境に用意された模擬のネットワークにハッキングして情報を抜き取れるかを試すといったトレーニングを通じて、自分自身がハッカーの行動を体験してサイバー犯罪組織の技術や行動様式を理解するといった研鑽を積んできました。
 JPECにおいても、国内外で行われている研修を受講したり、自分自身でも、実験用に保有している電子機器を使って、どのような操作をすると、いかなる痕跡が残るのかを実験したりするなどして、引き続きこの分野の知見を更新し続けています。

醍醐味・やりがい

 JPECにおける仕事の醍醐味は色々ありますが、ここは、情報通信技術や捜査手法に関する最新の知見を収集している「検察の最先端」であり、その知見を活用することで、検事等から寄せられた質問・相談に対する対応を通じて、実際の事件の問題や疑問を次々に解決していくことができることに、日々やりがいを感じています。
 人にはそれぞれ得意分野があると思いますが、検察には、法律以外の分野についての専門知識を深めていくことで活躍できる場もあります。
 もともと専門知識を持った人であればその知識は活かせると思いますし、そうでなくとも、興味があれば、任官後にこうした知識を深めていく機会もあります。