捜査担当検事の写真

真相の解明が何より重要

平成13年に任官後、東京、大阪、長崎、横浜、福島、静岡、名古屋などで勤務
その他、司法研修所でも勤務し、現在は千葉地検刑事部勤務


本部係検事という仕事

 私は、現場の検事として勤務した経験が長く、全国の地検で様々な事件の捜査や公判に携わってきましたが、中でも殺人や強盗殺人などの事件を数多く取り扱ってきました。
 そして、検事になって15年目以降は、本部係検事という立場で、数々の凶悪重大事件の捜査に携わりました。
 本部係検事とは、殺人その他の凶悪重大な犯罪に係る事件のうち、警察本部長が捜査本部を設置した事件を取り扱う検事のことをいい、全国の地検に配置されています。
 殺人や強盗殺人などの凶悪重大事件が発生すると、警察は事案の早期解決に向けて捜査本部を設置し、捜査一課員を中心とした大量の捜査員を投入することがありますが(検察では、これを「本部事件」と呼んでいます。)、本部係検事は、本部事件の捜査において、発生当初から捜査に関与し、事件発生の一報を受けると、検察事務官と共に直ちに現場に向かいます。

張り詰めた空気を超えて

 現場周辺は、多くの報道陣などが詰めかけて不安と緊張が入り交じったような雰囲気に包まれますが、その人ごみを越えて規制線の中に入ると、事件現場特有の張り詰めた空気が流れており、その中で、警察官が黙々と鑑識活動を行い、犯人の痕跡を見逃さずに採取しています。
 本部係検事は、このような現場の空気に触れ、現場やその周囲の状況を自分の目で確認し、その後の捜査状況や問題意識を警察と共有しながら、警察と共に事件の解決を目指すのです。

迅速かつ適正な捜査の実現のために

 どうして、本部係検事は、本部事件の発生当初から捜査に関与する必要があるのでしょうか。
 本部事件は、被害者やそのご遺族などを深く悲しませ、地域に不安と恐怖を与えるものですので、犯人の早期検挙が求められますが、犯人でない人を誤って逮捕・起訴するようなことがあれば、その人には取り返しのつかない不利益を与えてしまうことになりますし、他方で、真犯人が社会の中で自由に振る舞うことを許してしまうことにもなります。
 そこで、本部係検事は、捜査・公判手続を知る法律家として、事件の発生当初から警察と協同して捜査を行い、刑事裁判で適正な判決を得るに足りる証拠が収集されているかどうかを見極め、誤った逮捕・起訴が起こらないように留意しながら、迅速かつ適正な捜査の実現に努めているのです。

検察の仕事の醍醐味を味わえる

 私は、事案の適正な解決・適正な科刑の実現のためには、真相の解明が何より重要だと考えており、事案の真相に最も迫り得る仕事として検事を志しました。
 本部係検事は、事件の発生当初から、事件の真相が少しずつ明らかになっていく過程に携わることができ、正に検察の存在意義を感じることができるやりがいのある仕事といえると思います。