第63回“社会を明るくする運動”によせて

最終更新日:2015年12月28日

更生保護法人釧路更生保護会機関紙 「道東更生」124号(2013年7月1日発行)に掲載
 
元釧路地方検察庁検事正 山下輝年
(道東地方推進委員会委員長)

◆「人の恩は岩に刻め 己の恩は砂に書け」
 
この格言は微妙に異なるバージョンがありますが、これが一番しっくりきます。それは、自分の恩を水に流すよりも、砂に書けばいずれ消えるものの一時的には残る、つまり一瞬は誇ってよいという含意があるからです。
 更生保護に携わる方は、対象者との関係でも、立ち直りに協力して下さる方との関係でも、日々これを実感していることでしょう。また社会を明るくする運動は今年で63回目ですが、毎年この活動に協力支援して下さる方々に触れる度に、恩を「心という岩」に刻んでいるはずです。同時に、皆様には砂に書くことで自己の存在意義を実感していただきたいと思います。

 
◆「恨みは水に流せ」
 なるほど犯罪や非行に走った人は恨みを買っていることでしょう。しかし恨めば、その恨む時間だけ、相手そして過去に自分の貴重な時間を奪われています。恨みを水に流し相手を赦せば、実は自分の自由を取り戻せるわけです。
 犯罪や非行に陥った人は必ず社会に戻ります。我々そして社会の側に、受け容れる度量が求められているのです。砂に書くことが存在価値の認識に繋がるように、彼らの「居場所」と「出番」が社会にあることで、彼ら自身が存在意義を実感し、立ち直る第一歩になります。「社会を明るくする運動」で、理解者を一人でも多く得て、この運動を更に拡大していきたいと思います。
 
 
◆「国境は人が作る 垣根も人が作る」
 世界地図は国境があり色分けされていますが、自然界の地球は大地と海だけです。国境は人工的なものなのです。同じく人間界の垣根、つまり差別・無視・排除ですが、これも人が勝手に作っています。
 折しも3年前の道東地方推進委員会委員長が法務省保護局長となり、保護観察者を非常勤職員として採用しました。これは前例なしという見えない垣根を乗り越えたものです。現場が少しでも活気づけばよいという意図もあるでしょう。
 自然が豊かで人情味溢れる道東に人工物は似合いません。「犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ」を体現すべく、 皆様の御協力をお願い申し上げます。

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