司法修習生に贈る言葉 ~第66期司法修習生実務修習終了式にて~

最終更新日:2015年12月28日

元釧路地方検察庁検事正 山 下 輝 年

 第66期司法修習生7名全員が,この釧路で10か月間の実務修習を無事に終えました。その間の研鑽と努力に対して,まずは心から敬意を表したいと思います。

 

「三つのメガネ」を外す
 
平成24年11月27日の開始式で,私は「三つのメガネを外そう」と言いました。それは色メガネ・伊達メガネ・虫メガネでした。
 色メガネの意味は,周囲の情報で出来あがった先入観を捨て,自分の目で実務法律家の活動を見つめて自ら判断するということ。
 伊達メガネの意味は,知ったかぶりや格好を付けることをやめて,「無知の知」つまり知らないことは多いということを自覚して,素直な心で学ぶ姿勢を身に着けるということ。
 虫メガネの意味は,物事を細かく見るのも大事であるが視野が狭くなるので,その周囲に広がる景色も見つめる,つまり司法・法律以外の分野にも関心を持つということ。
 要約して話すと,こういう内容でしたが,覚えておられるでしょうか。
 
 
 「とんぼのメガネ」を掛ける
 さて,今後,司法研修所での研修と二回試験を迎えるわけですが,以前より不合格者数が増えたとはいえ,それでもなお,皆さんがこれまで受けてきた試験より最も合格率が高いわけで,普段の力を発揮すれば何も恐れる必要はありません。その後は,晴れて実務法律家になり,社会の紛争で困っている人から頼られる存在になるわけです。
 そこで,この終了式で伝えたいことは,メガネ繋がりで言いますと,今後は「とんぼのメガネ」を掛けるようにして下さい,ということになります。
 それは二つの意味においてです。
 一つは,非科学的ですが,「とんぼのめがね」という歌では,青い空を見れば水色に,お天道様を見ればピカピカに,夕焼け雲を見れば赤色になる,となっています。これは,物事を素直に見つめるということに繋がると言えます。皆さんはこれから様々な人と接しますが,虚心坦懐に相手の言うことをまず受け止めるようにしてください。感動的なこともあれば,腹立たしいことや耳の痛い話もあるでしょう。それを受け止めるには「素直な心」が必要です。
 二つ目は少し科学的ですが,トンボの目は複眼です。なんと1万個にも及ぶ目の集合体で,180度以上の視野があり,ちょっと動かすだけで360度,つまり全方向が視野に入ると言われています。皆が裁判官と同じ発想や見方であれば,検察官や弁護士は不要になります。皆が納得いく結論に辿り着くためにも,複数の見方とそれを乗り越えていく過程も重要なのです。
 皆さんも一つの見方ではなく,複数の見方,あるいは水平思考と言ってもよいのですがこれを身に着けるよう自己研鑽を積み,社会に貢献されることを期待いたします。
 

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